ぼくらのストロベリーフィールズ
4-2
☆
「のばら、どーした?」
「ん? 何でもない。おかわりは?」
「お、じゃあお願いしていい?」
父が家に帰ってきて、久々に2人で朝食を囲んだ。
この前、尚紀くんに料理を教えてもらったからか、若干自分のカンが良くなった気がする。
なめこの味噌汁といり卵を作ってみた。
「次はどれくらい行ってくるの?」
「今回は2、3週間かなー。あ、最近、このへん痴漢とか空き巣とか時々出るらしいし、気をつけろよー」
「はーい」
リビングには出張帰りの父の荷物が散らばっている。
その方向をぼーっと眺めていたら、
父に「ごめんなー。次帰ってきたらちゃんと片づけるから」と言われ、私は我に返った。
「いいよ、クリーニング出したり私がいろいろしとくし」
「でもさっきからぼけっとして。疲れてるんじゃないか?」
「大丈夫、ちょっと眠いだけだって。まかせといてよ!」
尚紀くんの唇の感触は、まだはっきりと頬に残っていて、
あの時に意識が何度も巻き戻されてしまっていた。