ぼくらのストロベリーフィールズ



「あ、おいしーじゃん」


「ちょっとつまみ食いしないでよ!」



じゅーじゅーと焼きそばを炒める。


一吾くんがそれをのぞきこんだと思いきや、具材をひとつまみして口に放り込んだ。



「ねー。なんか、私、家政婦みたいになってない?」


と口を尖らせると、


「だって家にのばらいると飽きないし」


と、隣で一吾くんがモグモグとつぶやく。



いつの間にか彼の髪は、綺麗に脱色された髪から、アッシュがかった茶髪になっていた。


金髪よりも落ち着いた雰囲気が出て、ぐっと大人っぽくなった気がする。



近づかれると、ほんの少し鼓動が早まってしまうほどに。



でも。『飽きない』って。


確かに私、だいぶ一吾くんに振り回されてるからな……。



まあ、家に一人でいる方が危なそうだし、一吾くんの家にいた方が安全なのかも。



「あと、来てくれるじゃん。絶対」



そう言って、一吾くんは麺と野菜の隙間にあるウインナーをひょいとつまみ、リビングへ向かっていった。



「…………」



『絶対』という言葉に、ぎゅっと胸が締め付けられる。



最近、尚紀くんのことをぼんやり考えてしまうからか、罪悪感に似た気持ちが喉元に押し寄せた。



でも、それは一吾くんに対してのものか、尚紀くんに対してのものなのか、まだ分からない。



「あ、そうだ。今日、一吾くんのお母さん、ここ来てたよ」



気を紛らわすために話題を変えてみたけど。



「何で?」


「や、様子見に来たって、それだけみたいだけど」


「ふーん」



うーん。あまり興味がなさそうだ。


< 112 / 315 >

この作品をシェア

pagetop