ぼくらのストロベリーフィールズ
「あ、おいしーじゃん」
「ちょっとつまみ食いしないでよ!」
じゅーじゅーと焼きそばを炒める。
一吾くんがそれをのぞきこんだと思いきや、具材をひとつまみして口に放り込んだ。
「ねー。なんか、私、家政婦みたいになってない?」
と口を尖らせると、
「だって家にのばらいると飽きないし」
と、隣で一吾くんがモグモグとつぶやく。
いつの間にか彼の髪は、綺麗に脱色された髪から、アッシュがかった茶髪になっていた。
金髪よりも落ち着いた雰囲気が出て、ぐっと大人っぽくなった気がする。
近づかれると、ほんの少し鼓動が早まってしまうほどに。
でも。『飽きない』って。
確かに私、だいぶ一吾くんに振り回されてるからな……。
まあ、家に一人でいる方が危なそうだし、一吾くんの家にいた方が安全なのかも。
「あと、来てくれるじゃん。絶対」
そう言って、一吾くんは麺と野菜の隙間にあるウインナーをひょいとつまみ、リビングへ向かっていった。
「…………」
『絶対』という言葉に、ぎゅっと胸が締め付けられる。
最近、尚紀くんのことをぼんやり考えてしまうからか、罪悪感に似た気持ちが喉元に押し寄せた。
でも、それは一吾くんに対してのものか、尚紀くんに対してのものなのか、まだ分からない。
「あ、そうだ。今日、一吾くんのお母さん、ここ来てたよ」
気を紛らわすために話題を変えてみたけど。
「何で?」
「や、様子見に来たって、それだけみたいだけど」
「ふーん」
うーん。あまり興味がなさそうだ。