ぼくらのストロベリーフィールズ
「今度家に遊びにきなよー。ちょっと遠いけど迎えに行くし」
帰り道は、心愛ちゃんが爆睡中のため、行きよりも車内は静かだった。
運転席の達也さんと助手席の一吾くんは楽しそうに話している。
ゆーたはバンドでCD出したらしい、とか、リーはバイト先の焼肉屋でアイドル扱いされている、とか。
「ねー本当に一吾ちゃんと付き合ってないの?」
ユメナさんは、眠っている心愛ちゃんの頭を撫でながら、私にニヤリとした笑みを向けた。
「や、付き合ってないですって! なんか家族みたいな感じでしょうか?」
「へーそうなんだ。……一吾ちゃん、のばらちゃんがいてよかったよ。絶対」
「そうですか? いっつもバカにされてる感じですけど」
窓から流れる景色は明かりを失った青々とした木々から、家やビルからの光が漏れる住宅街に戻っていた。
信号が青になり、ブオン、という大きなエンジン音に包まれる。
「一吾ちゃんのこと、ちゃんとつなぎとめてあげてね」
その音の隙間から、ユメナさんの真面目な声が聞こえた。
「はい……?」
返事をしておいたけど、
つなぎとめる、ってどういうことだろう。
さっき握った、彼の冷たい手の感触は残っていた。
ぼんやり考えを巡らせているうちに、彼のマンションの前に到着した。
今日は本当にありがとうございました、と伝えて、達也さんたちと別れた。