ぼくらのストロベリーフィールズ
達也さんはヒマそうにバイク雑誌を眺めていた。
『おーお前ら来たの? あ、クソガキも来たかー!』
高校に入って早々問題を起こし、たった1か月で退学。
そのことをいじると達也さんは『うるせー』と言って腹パンしてきた。
達也さんはニヤニヤしながら、
『何? もう一吾ちゃんと准ちゃん暴れたんだって?』と話しかけてきた。
僕が『はい……やっちゃいました』と頷くと、
准クンは『もう中学生活終わりましたよぉ。一吾は強いからいいっすけどぉ』と泣き言をいう。
『なーに。何かあったらゆーたとリーもいるし大丈夫だべ』
達也さんはオレンジが入った短髪に、胸板が厚くがっしりした体形。
腫れぼったい一重まぶたの目は笑うと線になり、嫌なことを忘れさせてくれるような魅力があった。
でもかなりケンカが強く、このあたりの不良たちの間では有名で、
地元の暴走族とも付き合いがあるらしい。
本人いわく、正当防衛しかしない主義、とのこと。
まぁ、きっとかなーり過剰な防衛ばっかりしてるんだと思う。
他の不良グループは上下関係が厳しいとか、後輩イジメをやっているとか聞くけど、
達也さんは『俺らのこと尊敬できるならついてくればいいし、逆に見限った時は離れていけばいい』と言ってくれた。
僕はケンカが強くて、准クンは(ずる)賢さが面白いと言われ、
2つ上のゆーたさんとリーさんはもちろん、3つ上の達也さんにも気に入られた。
『……でもあいつら弱かったっすね』と僕がつぶやくと、
『ぎゃはは! ちげーよ一吾ちゃんが強すぎんの! 俺と張りあえんじゃね?』
と言って、ゆーたさんがゲラゲラと笑った。
特にゆーたさんは、母子家庭であることと、冷え性ってことが僕と一緒だからか、よく声をかけてくれた。
僕たちに共通しているのは、自分自身ではどうにもできない何かを抱えていることだった。
そして、抱えているものを言い訳にしないことと、ぎゃーぎゃー楽しむのが好きなことだった。