ぼくらのストロベリーフィールズ
あの時、確かに母は浮気をしていた。
それは許せないことだ。
でも久々に母から電話がきて、話をしたら、心がきゅっと苦しくなった。
急に懐かしい気持ちが体中をめぐっていく。
バラバラになる前の家族の様子を思い出してしまったのだ。
母は時々口うるさかったし、父はすぐ物をちらかすけど、
なんだかんだ言って、週末にはピクニックに行ったり、運動会には2人で応援にきてくれたりした。
私はずっと家族という輪の中にいたのだ。
床やソファーの隅にはほこりがたまっていて、父のワイシャツもクリーニング屋のビニールがかかったまま。
1人になった今、私ももっとしっかりしなきゃいけない。
いつまでも子どもじゃないんだ。
そう思いながら、母が出ていったきり誰もしていなかった掃除を始めていた。
掃除機をかけた後、洗面台とお風呂場を洗う。
気が付くと額から汗がこぼれていた。
父と母とここで過ごした思い出がよみがえるとともに、
自分にもこの家にも温かい血がめぐっていくように感じた。
一吾くんは家族の温もりを知っているんだろうか。
そして、一体、彼はどこに行ってしまったんだろう。