ぼくらのストロベリーフィールズ
見上げると、灰色の雲が少しずつちぎれ、その隙間から水色の空が顔を出していた。
尚紀くんに5時間目サボろっか、と言われ、2人でプール裏に向かう。
授業サボるのとか初めてなんですけど!
とテンパってる私は、慣れた様子で足を進める尚紀くんを追うしかなかった。
「そっか。のばらちゃんも一吾と連絡とれないの?」
「うん。尚紀くんは連絡あった?」
「俺もないよー。一吾のバイト先とか行ってみる? あ、でも俺も今日バイトだわ」
この場所は、背を屈めると校舎やグラウンドなどから死角になる。
尚紀くんはプールの壁を背にして、だらっと地面に座った。
私はその隣にしゃがみこんだ。
尚紀くんはいつも通りの態度で接してきたため、私も自然な表情を保つことができた。
しかし、急に彼は私の顔をぐっとのぞき込んでくる。
至近距離で見つめられ、ドキッとした。
「のばらちゃん……大丈夫?」
「え?」
「一吾から聞いてたけど、今1人なんでしょ?」
「うん。まぁ大丈夫、かな」
まだ尚紀くんに見つめられているようで、私は顔をあげることができなかった。
仕方がないので、地面を進むアリを目で追っていると、
「そんな警戒しないでよー。あはは!」と言って、尚紀くんが笑い出した。