ぼくらのストロベリーフィールズ
いつの間にか足元のアリは私のローファーをよじよじと上っていた。
そのアリをぱっと手で払い、
「ずるいよ、そういうことさらっと言うの」
と、私はもごもごと伝えた。
「うーん。結構勇気いるんだけどなぁ」
尚紀くんは、膝にだらっと肘をかけて空を見上げていた。
私は少し憂いを帯びたその横顔に視線を向けた。
「だって壊したくないじゃん。今の関係? みたいなの。
俺、一吾とのばらちゃんどっちも大事だし」
そう言って、尚紀くんはちらっと横目で私を見た。
「…………」
「とりあえず、一吾ともう何日か連絡取れなかったら実家に連絡してみよっか。のばらちゃん番号とか知ってる?」
「あ……知らないや。この前、一吾くんママ来たときに、聞いておけばよかった」
「え? あいつのお母さんと会ったの?」
「うん。この前一吾くんの家に行ったら、たまたまいて」
「あー。じゃあ本当に実家行ってるのかも」
左上に目線をそらし、何かを考えていそうな様子で、尚紀くんは言葉を続けた。