ぼくらのストロベリーフィールズ







――この前、みんなで飲んだときに、なんかのきっかけで一吾に俺の家の話したの。


ほら、この前のばらちゃんにも言った、家族みんなグレたけど、お母さんが泣いて謝って俺も家族も変わった話ね。


そしたら、一吾、めちゃくちゃ驚いてて。



『親なんて都合のいい時だけガキを必要とするもんじゃん』って――。




「あの……こんにちは!」



一吾くんのメインバイト先である駅前の居酒屋に、おそるおそる来てみた。



のれんがかかっていない扉を開けると、

まだ仕込み中らしく、店長らしきおじさんが薄ピンクの肉をクシに次々と刺していた。



「ん? まだ準備中だよ」



「一吾くん、じゃなくて榊田一吾くん、最近バイト来てますか? 

あ、私一吾くんの友達で。最近連絡とれなくて……その。ここにいないかなって」



坊主頭にタオルを巻いたそのおじさんは、がっしりした体格にいかつい顔面。


ひー怖そう!


勇気をもって扉を開けたものの、速攻でビビってしまった。



その店長らしき人は、肉を刺した串をトレーに置き、

「一吾ちゃん、しばらく休むって連絡あったきり来てないよ」と教えてくれた。


「そうですか……」


「はぁー頼りにしてんのに。おかげでここ最近大変だよ」



一吾くん、バイトにも来ていないんだ……。



でも、一吾くんのこと『頼りにしてる』って。


やっぱりバイトちゃんと頑張ってるんだ。


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