ぼくらのストロベリーフィールズ
☆
――この前、みんなで飲んだときに、なんかのきっかけで一吾に俺の家の話したの。
ほら、この前のばらちゃんにも言った、家族みんなグレたけど、お母さんが泣いて謝って俺も家族も変わった話ね。
そしたら、一吾、めちゃくちゃ驚いてて。
『親なんて都合のいい時だけガキを必要とするもんじゃん』って――。
「あの……こんにちは!」
一吾くんのメインバイト先である駅前の居酒屋に、おそるおそる来てみた。
のれんがかかっていない扉を開けると、
まだ仕込み中らしく、店長らしきおじさんが薄ピンクの肉をクシに次々と刺していた。
「ん? まだ準備中だよ」
「一吾くん、じゃなくて榊田一吾くん、最近バイト来てますか?
あ、私一吾くんの友達で。最近連絡とれなくて……その。ここにいないかなって」
坊主頭にタオルを巻いたそのおじさんは、がっしりした体格にいかつい顔面。
ひー怖そう!
勇気をもって扉を開けたものの、速攻でビビってしまった。
その店長らしき人は、肉を刺した串をトレーに置き、
「一吾ちゃん、しばらく休むって連絡あったきり来てないよ」と教えてくれた。
「そうですか……」
「はぁー頼りにしてんのに。おかげでここ最近大変だよ」
一吾くん、バイトにも来ていないんだ……。
でも、一吾くんのこと『頼りにしてる』って。
やっぱりバイトちゃんと頑張ってるんだ。