ぼくらのストロベリーフィールズ
動くと足音が立ちそうで怖くなり、その場を動くことができなくなった。
明らかに人がいる気配がする。
物がひきずられたり、引き出しが開けられるような音が、階段下から連続で聞こえてきた。
警察に電話しなきゃ!
でも声が1階まで響いてしまったら、もっと危ないだろう。
ガタガタと体が震える。
床をきしませてしまいそうで、さらに恐怖が増す。
どうしよう……!
よりにもよって、何でお父さんが帰ってくる前日に!
家には金目のものはないし、早く出て行って!
でも――
1階の物色を終えたら、私のいる2階まで上がってくるかもしれない。
ここには私の財布がある。所持金は今、いくらだ?
カバンの中にある財布を探ろうとしたが、
足を動かすと、ぺたりとフローリングと足裏が離れる音が部屋に響いた。
息が、小刻みに吸っては吐き出される。
だめだ!
とりあえず今は動いちゃだめだ。
ああ。一吾くんがいたら……。
彼の家は、歩くと5分くらいだけど、走れば2、3分の距離だ。
スマホの光が階段まで広がらないよう、手で画面を隠しながらラインを立ち上げた。
一吾くん……! 一吾くん……!
祈るように彼へのメッセージの画面を開いた。
「……っ!」
驚きのあまり声が出そうになり、私は息を止めた。
私が送ったメッセージに『既読』がついていたのだ。