ぼくらのストロベリーフィールズ
顔をあげると、一吾くんは目をそらし私の逆側を向いた。
「危なかったのはのばらの方じゃん」
「一吾……くん?」
「何でおれのために泣いてんの? わけわかんない」
そう言って、眉間にしわをよせ首をかしげた。
もう一度、パーカーの肩の部分に手を伸ばしたけど、ぱっと手が払われた。
あきらかに私を拒否しようとしている。
「……寝る」
――どうして?
いつも冷たい手から私に温もりを与えてくれるくせに。
いざ私から君を求めようとするとどうして逃げるの?
わけわかんないのは一吾くんの方だ。
私は無我夢中でその腕をつかみ引っ張った。
そして、鋭い目線をしたままの一吾くんへ強引にキスをした。
「…………」
なぜそうしたかは分からなかった。
でも、絶対につなぎとめてやる、という意識に体が動かされた。
柔らかい冷たさが、唇から私の体を巡っていく。
重なった部分に、頬を伝ってきた涙が一粒合わさった。
「襲うよ」
離れた瞬間に浴びせられたのは、その唇のように冷たい言葉。
表情も全く変わっていない。