ぼくらのストロベリーフィールズ
私は体が震えないように、爪を自分の手のひらに差し込んだ。
「うん」
「ばかじゃねーの」
彼の中では今、どんな思いがうごめいているのだろう。
相変わらず冷たい声を発されたけど。
さっきとは違って、刺すような視線は私に向けてくれている。
怖いという感情に必死で目をつぶり、私は口を開いた。
「……ありがとう」
「は?」
「助けてくれてありがとう、のキス」
かすれた声でそう伝えると、逆に一吾くんは私の腕を強く引いた。
気がついた時には、もう一度、彼と唇が重なっていた。
強い鼓動とともに、彼から求められた嬉しさが全身を包んだ。
「…………」
さっきよりも長いキス。
触れ合っている部分は、次第に温もりを増していく。
離れた瞬間、つかまれたままの腕が強く握られた。
「無事でいてくれて……ありがとうのキス」
とその唇がかすかに動く。
嬉しくて、自然に顔がほころんでしまう。
どくんどくんと、今一吾くんのために早く打つ鼓動が気持ちよくて、
一生このスピードのままでもいいと思ってしまった。
私は笑わないように、もごもごと口元をこらえていた。
しかし、先に笑い出したのは一吾くんだった。