ぼくらのストロベリーフィールズ
見に行くのは朝日じゃなくて、耳をつんざく爆音の中、暗い闇の中を泳ぐ赤いテールランプだった。
『うわー王蟲の群れみてーじゃん』
とリーさんが歩道橋から身を乗り出して叫んでいる。
ゆーたさんは何かの歌を口ずさんでいた。
何の歌っすか? と聞くと、
彼はブランキーなんとかという、僕の知らないバンド名を口にした。
歩道のはじっこや歩道橋には、僕たちと同じように暴走を見に来た人たちがいて騒がしかった。
改造されたバイクや車高の低い車が通りすぎる度に、人が発する声は全て爆音にかき消された。
『あ、達也さんいた』
『すげー! かっけー!』
激しい音を発しながら蛇行を繰り返す軍団が、ゆっくりと遠ざかり、
猛スピードでかっ飛ばすグループが紛れ込んでいく。
道路を占領して、みんな好き勝手に運転をしていた。
ここは族や暴走好きのチームがよく集まってくる場所らしい。
しかし――
『わ、サツ来た!』
点滅する赤いランプが近づき、バイクたちはアスファルトを滑るようにスピードを上げた。
ギャラリーも慌てて解散していく。
『おれらも逃げるべ!』
後ろを振り返ると、
激しい音を発しながら、色とりどりの光を発する軍団は夜の闇の中へ消えていき、
それらをパトカーや白バイ軍団が追っていた。
達也さんは大丈夫だろうか。
そう思いながら、工場裏に隠したチャリまでダッシュした。