ぼくらのストロベリーフィールズ



『高校どーっすか?』


『あ? まーそれなりだべ』


『面白いヤツいますか?』


『いいベース弾くヤツ見っけてよくつるんでるわ』



ギーギーとペダルをこぐたびに金属がこすれる音が響く。


ゆーたさんはタバコを止めたようで、2ケツをしても去年とは違って後ろから煙が流れてこなくなった。



『一吾ちゃんは? 家は大丈夫なん?』


『別に普通です。なんか変な男住み着いてますけど』



横では、リーさん寝ないでくださいよぉ、と言いながら准クンが懸命に自転車をこいでいた。



途中でコンビニに寄り、飲み物を買った。


駐車場のすみに自転車を停めて、4人でたまる。



ゆーたさんが、わりぃ1本だけと言ってきたので、タバコと火を分けてあげた。


准クンは、制服がタバコ臭いと親に殴られたせいで、禁煙中。


リーさんは彼女が有名モデルらしく、その彼氏として人前でタバコと酒はしないことにしたらしい。



『達也さん大丈夫っすかね』


『大丈夫っしょ。あんなんしょっちゅうだべ』


『でも別の意味で心配じゃないっすかぁ』


『まーねー。いつパクられるか事故るか分かんないしねー』



達也さんの彼女――ユメナさんの妊娠が分かったのは、彼が地元の族に入って間もなくのことだった。



お腹を大きくしたユメナさんは『あいつは不死身だから大丈夫っしょ』と言って笑っていたけど。



タバコの灰色の煙が、藍色の夜空に溶け込んでいく。


達也さんがこの煙のように、夜の闇の中にいつか消えてしまうんじゃないかと不安に思った。




< 161 / 315 >

この作品をシェア

pagetop