ぼくらのストロベリーフィールズ
『高校どーっすか?』
『あ? まーそれなりだべ』
『面白いヤツいますか?』
『いいベース弾くヤツ見っけてよくつるんでるわ』
ギーギーとペダルをこぐたびに金属がこすれる音が響く。
ゆーたさんはタバコを止めたようで、2ケツをしても去年とは違って後ろから煙が流れてこなくなった。
『一吾ちゃんは? 家は大丈夫なん?』
『別に普通です。なんか変な男住み着いてますけど』
横では、リーさん寝ないでくださいよぉ、と言いながら准クンが懸命に自転車をこいでいた。
途中でコンビニに寄り、飲み物を買った。
駐車場のすみに自転車を停めて、4人でたまる。
ゆーたさんが、わりぃ1本だけと言ってきたので、タバコと火を分けてあげた。
准クンは、制服がタバコ臭いと親に殴られたせいで、禁煙中。
リーさんは彼女が有名モデルらしく、その彼氏として人前でタバコと酒はしないことにしたらしい。
『達也さん大丈夫っすかね』
『大丈夫っしょ。あんなんしょっちゅうだべ』
『でも別の意味で心配じゃないっすかぁ』
『まーねー。いつパクられるか事故るか分かんないしねー』
達也さんの彼女――ユメナさんの妊娠が分かったのは、彼が地元の族に入って間もなくのことだった。
お腹を大きくしたユメナさんは『あいつは不死身だから大丈夫っしょ』と言って笑っていたけど。
タバコの灰色の煙が、藍色の夜空に溶け込んでいく。
達也さんがこの煙のように、夜の闇の中にいつか消えてしまうんじゃないかと不安に思った。