ぼくらのストロベリーフィールズ

6-1








食卓には私が作ったカレーライスが3皿、並んでいる。


父と私、そして一吾くんの分。


母の作ったカレーには遠いけど、ルーと具材とで辛さと甘さの両方を出せたと思う。



「うーーーーん」



父は大きなジャガイモを口に入れたまま悩んでいた。



「まあ、確かに一吾くんの言うことはわかるよ? のばらが1人なのも心配だしね……。でも……。うーーーーん」



父がうなっている間に、一吾くんは人参をよけてカレーを口に入れていた。


私は、野菜残さないでよ、と小声で注意する。



家に帰ってきた父は、寄り添って爆睡していた私たちに驚いていた。


色々片づけや手続きを終えた後、一吾くんも一緒に夜ご飯を食べることに。



そして、食事中に一吾くんが突然、

『のばらさん1人の時は、おれの家で預かってもいいですか?』と言い出したため、今こうなっている。



「確かに一吾くんの家、オートロックあるしここより安心かも」



心をそわそわさせながらも、私も一吾くんの意見に同意した。


まあ、すでに何度も泊まっている状態だし。



「やーでもねー。ほら、一吾くんものばらも、何ていうの? その、いわゆる年頃の男女? ってやつだしさー。だから親としてはねー」



「手ー出しませんから大丈夫ですよ」


「ぶっ! げほっ、げほっ」



言葉をにごした父に対して、直球で返す一吾くん。


父は驚き、ご飯つぶを噴き出した後、むせていた。



「お父さん汚いー。はい水」


「げほ、げほ。ごめん、どーも」



水を飲んでから再び「うーーーーん」と悩む父の手元では、会社用の携帯電話が振動している。


急ぎではないのか、ちらっと見ただけでズボンのポケットに戻した。


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