ぼくらのストロベリーフィールズ
ふと一吾くんのことを思い出す。
『一吾くん……遠くに行っちゃうの?』
『うん。のばらちゃん泣かないで』
『嫌だよぉ! 何で?』
『……新しいお父さんができるから』
7年くらい前。
一吾くんの引っ越しが決まった時、
彼は無表情で、棒読みのような口調でそう言った。
母子家庭だった一吾くん。
普通に両親がいる私はあの時、『新しいお父さん』という響きに不思議な思いを抱いた。
そういえば、彼はどうしてこの町に戻って来たのだろうか。
バイトをもう始めているらしいし、何か事情があるのかもしれない。
もしかして新しいお父さんと上手くいかなかったとか?
それとも中学の頃もいじめられてて、高校は別エリアのとこにしたかったとか?
一吾くんと言えば、か弱くて細くて小さいイメージ。
彼が楽しい高校生活を送れるよう、できることはしてあげたい。
『一吾くん、ちゃんと高校に馴染めればいいんだけど……』
尚紀くんにもサポートしてもらいたくて、そうメッセージを送ってみた。
『うん。確かに……(;^ω^)(;^ω^)(;^ω^)』
ん?
何だろう、この微妙な反応は?