ぼくらのストロベリーフィールズ
中学の頃みたいにモテモテの先輩と付き合っているわけじゃない。
高校に入ればみんなも大人になって、普通に友達とも彼氏とも楽しく過ごせると思っていた。
(彼氏はまだできていないけど……。)
なんだか、上手くいかないなぁ……。
ゴミ箱を片手にとぼとぼと階段を下ると、尚紀くんの姿を見つけた。
「あれ。珍しいね、真面目に掃除してるんだー」
集積所からの帰りらしく、尚紀くんの手には空のゴミ箱があった。
冗談っぽく声をかけた私に、彼は顔を向ける。
「…………」
その表情にはいつもの笑みがなかった。
やば、機嫌悪いのかな、とそわそわしていると。
「のばらちゃん、これ」
尚紀くんは低い声とともに見覚えのある冊子を私に向けた。
「あ……」
それは私の名前が書いてある、数学Aの教科書。
ところどころ切り刻まれていて、
表紙には大きく乱暴な言葉が書かれていた。