ぼくらのストロベリーフィールズ
どきん、どきん、と嫌な音で心臓が鳴った。
「心当たり、ある?」と鋭い目線のまま聞かれ、私は首を振る。
「だったらチクりなよ。先生に」
「や……それは」
最近のナズちゃんの言動や、友達からの忠告を思い出す。
そうだとは思いたくなかった。
心のどこかで私はターゲットにならないと信じていた。
じわりと目に涙がたまる。
手にしたゴミ箱を落としそうになり、私ははっと息を吸い込んだ。
同時に顔をあげる。
すると、困った顔をしながらも、優しい目を向けてくれている尚紀くんがいた。
さっきの怖い目とのギャップに驚くとともに、私は少し安心した。
「とりあえず、新しいの買わなきゃね」
「うん……」
他の生徒たちの声や足音が近づいてくる。
それに気づいたらしい尚紀くんは、
「こういう時はいい子でいちゃだめだよ」と耳打ちしてから、自分のクラスへ戻っていった。