ぼくらのストロベリーフィールズ
『俺さー。知っちゃったんだよね、アニキの成績落ちてるの。んで親父にすげー怒られて、メンタルやばくなってるの』
『へー?』
『だから親父に言われた。成績あげたら付属入れてやるって』
准クンは僕と一緒で授業は寝たりサボったり。
だけど、僕よりも成績は断然良い。
ずる賢さ、というより地頭がたぶんいいんだと思う。
『悔しいよね。今までさんざん俺のことコケにしてきたくせに。親に期待されるって、何でこんなに悔しいんだろう』
そう言って、准クンは夜空に向けて煙を吐き出した。
今まで頭のいいお兄さんをひいきしてきた親が、いきなり准クンに期待をし出したってことだろうか。
『悔しいよ、だって親がいないとメシ食えないし学校にも行かせてもらえないし。俺らまだただのガキなんじゃん。まじで悔しい……』
1階から母やお客さんたちが談笑する声が聞こえてくる。
僕の母はどういった方法であれ、路頭に迷うことなくお金を稼いできた。
ほぼ放置されていたとはいえ、僕も母に養われて今まで生きてきたのだ。
『うん……』
空き缶に吸殻を放ってから、僕は准クンの頭をぽんと撫でた。
僕の方を見ないまま、准クンは軽く肩を震わせていた。
『悔しいけど嬉しいんだよ。ほんと俺バカみたい。親を使えるときだけ使って早く自立するしかねーじゃん……』
1階からのカラオケ音に混ざって、部屋の中に鼻水をすする音が聞こえた。