ぼくらのストロベリーフィールズ
ある日、格闘技イベントのチラシを手にした。
人気選手のトーナメントのほか、ジュニアの部の全国大会も開催されるらしい。
何となく、見に行ってみようかなと思った。
もしかしたら力くんがいるかもしれない。
だけど、今の僕を力くんたちに見られたら、失望されるんじゃないかという不安もあった。
教えてもらった格闘技は結局ケンカに活用して、何の目的もなく毎日を送っているだけの僕を。
プロレスや格闘技好きのゆーたさんを誘ったが、
『わりー今日バンド練あって。今度埋め合わせするわ!』
と断られたため、1人で行くことにした。
会場中心のリングに沿って、観覧席が設けられていた。
予想通り、ジュニアの部に力くんが出場していて、セコンドには力くんパパがついていた。
打撃でけん制しあった後、タックルで相手を倒し寝技に持ち込む。
当たり前だけど、力くんはあの頃よりも各段に力がついていた。
格闘技として、スポーツとしての強さだった。
惜しくも優勝は逃したけど、3位入賞を果たしていた。
『え!? もしかして……一吾!? だよな?』
ジュニアの部の後は、有名選手たちが戦うイベントになる。
会場を出ようとしたら、後ろから力くんらしき声に呼び止められた。
『…………』
僕は後ろを向いたまま、無言で片手を上げることしかできなかった。
やはり今の自分を力くんには見られたくなかった。