ぼくらのストロベリーフィールズ
会場を出てしばらくすると、聞きなれたバイクの騒音に包まれた。
『よっ、ふりょー少年!』
達也さんの姿に気が付くと同時に、黒いメットが放物線を描いた。
僕がそれを受け取ると、達也さんはシートの後ろをポンポンと叩く。
どうやら同じイベントを見に来ていたらしい。
『いーんすか? ジュニアの部終わってこっからがメインですよ?』
『だっていかにも寂しそーな少年がいんだもーん』
エンジン音と風を切る音に負けじと大声で会話する僕たち。
達也さんのバイクはド派手な族車とまではいかないけど、後ろのシートが座りやすいよう改造されていて乗り心地はよかった。
『そういえば達也さんは大丈夫なんすか? みんな心配してますよ』
『あ? 何が?』
『ユメナさんと心愛ちゃんいるじゃないっすか。族入ったままでいーんすか?』
『ねー。…………』
それっきり、達也さんは無言のままで、日が落ちた国道を進んだ。
違反ぎりぎりのマフラーなのか、近所迷惑な音がまわりの建物に響き戻ってきた。
スピードもかなり出しているはずなのに、全身にあたる風が心地よかった。
車が少なくなり暗闇の中を突き進んでいると、このまま消えてもまあいっかな、なんてことを考えてしまった。
いや、家族がいる達也さんは消えちゃダメだ。
僕だけで十分だ。