ぼくらのストロベリーフィールズ
次から次へと背の高い街灯が押し寄せてくる。
景色は少しずつ光を失っていき、気がつくと建物の隙間は真黒な闇になっていた。
信号で止まると、達也さんのタバコの臭いに海の香りが混ざった。
『どこ行くんすかー?』
『ピリオドの向こう』
『どこすかそれ』
『あー? だまって乗ってろクソガキ、舌かむぞー』
大型トラックをどんどん追い越していく。
突風に全身が包まれる感覚が気持ちよかった。
ファミレスを出たのが22時ごろ。
それから、かれこれ2~3時間は経っているだろうか。
『ユメナさんに連絡しなくていいんすかー?』
『…………』
達也さんが黙るときはだいたいマジな時のため、僕は無言で振動や風や音に身を任せることにした。
そのまま橋を何度か渡り、埋立地に入る。
広すぎる道路の左右には、フル稼働中の工場がピカピカとそびえ建っていた。
瞬間瞬間に見える景色は、工場夜景を見に来たカップルか、悪そうな若者たち、巡回中のパトカーくらいだった。
気がつくと、まっすぐな片道1車線の道路にさしかかっていた。
狭い視界の奥には何の光も見えなかった。
その闇が少しずつ近づいてくる。
『達也さん?』
風の鋭さが増すとともに、この先が行き止まりであることと、
暗闇の正体は海だということが分かった。