ぼくらのストロベリーフィールズ
達也さんは一体、何を考えているんだ?
まさか、このまま僕と一緒に突っ込むつもりだろうか。
親交のある地元の先輩や後輩、ユメナさんや心愛ちゃん、そして親もいる達也さん。
彼はここにいなければならない人物だ。
スピードはさっきよりも格段に上がっていた。
鋭い風が顔面に突き刺さり、僕は目を閉じた。
緊張で心臓の音が早くなった。
初めて死をイメージした瞬間だった。
でも、なぜか海に沈んでいく自分の映像とともに現れたのは――
いじめられっこだった僕を助けてくれた女の子。
僕を友達と認めてくれて、強くしてくれた田舎の仲間たち。
一緒に楽しいことや悪いことをしまくった、准クンやリーさん、ゆーたさん。目の前にいる達也さん。
そして、一緒に生きていこうねと泣いた母の姿。
黒い海の中で僕は、もがきながらも何かに向かって手を伸ばしていたのだ。
数時間前までは消えてもいいと思っていたはずなのに。
風圧に負けじともう一度目を開く。
突き刺さる風や音、全身に響く振動と鼓動は確かなものだった。
達也さんは、僕がちゃんと座っているか時々ミラーでチェックするものの、その表情は怖かった。
激しさを増す風に飛ばされないよう、僕はシート後ろのバーを必死で握っていた。
『…………っ!』
道の先には立ち入り禁止のフェンスがあり、へこんでいる部分と破れている部分が鮮明に見えた。
その奥は、無限に広がる真黒な海。
だめだ、やっぱり突っ込む――!?
怖さのあまり声を出しそうになった瞬間、達也さんの手が動いた。