ぼくらのストロベリーフィールズ
目を開けた時、視界にあったのは達也さんのいつもの背中だった。
行き止まりまで残り2メートルくらいだった。
吹き付けてくる風から潮の香りがした。
ほっとため息を吐く僕に対して、達也さんはポケットからタバコを出し火をつけていた。
そして、
『あー。俺1人だったらもっとギリギリいけたかなー』
という言葉を煙と一緒に吐き出した。
『はい?』
『あ、1人っつーのは後ろに一吾ちゃんいるから、じゃなくて、色んな意味での1人ってことね』
そう言って、いつもの笑みを僕に向けた。
『ははっ、あはははは!』
安心で腰が抜けそうになったのか、頭がおかしくなったのか。
自然と僕は笑い出していた。
『何? 面白かった?』
『や、死ぬかと思いました。あははは!』
『んだよ。だいぶ安全にやったつもりなんだけど。あと、俺の技術なめんなよ』
達也さんからタバコをもらい、僕も煙を体に入れて吐き出す。
『……でも、逆に生きてる感じしました』
『ぎゃははは! んだべ?』
足元に広がる黒いうろこのような波は途切れなく揺れていて、まるで大きな生き物のようだった。
それは僕の心臓がしっかり動いている証拠のようにも思えた。
『あんさ……一吾ちゃんは知ってた? 俺が養子ってこと』
波の音に混ざり、達也さんの真剣な声が聞こえてきた。