ぼくらのストロベリーフィールズ
『あ、はい……』
『うちのかーちゃんガキは産めねーけど、十分すぎるくらい俺のこと育ててくれて、良くしてくれて、すげー感謝してるの』
達也さんは正面を向き、いったん煙を吐き出した。
それから左胸を何度か叩き、
『でもさ、ずっとここがもやもやしてんだよ。やっぱあんのかな? 血つながってるとか、つながってないとか。理屈じゃ説明できねーんだけど』
と続けた。
『ああ……』
『ケンカしたり、族入ったり、血流したり、流されたり。今まで何しても別に怖くなかったのね。……でも、ガキできてから変わった』
『はい』
『でも、怖いとか思ったら負けるんだよ、事故るんだよきっと。だからケンカのときや族として走るときはそういうの忘れるようにすんの。
でも俺やっと18になったじゃん』
打ち寄せる波の音と一緒に思いを吐き出す達也さん。
僕はやっと彼が何を言いたいのか、理解できた。
『結婚するんすか?』
『ぴんぽーん』
『族抜けるんすか?』
『ぽんぴーん』
吸殻をアスファルトに落とし、踏みつけた後、達也さんは再びバイクを走らせた。
ここはチキンレースのスポットらしいので、他の族や警察に見つかる前に移動するのだと。
直線道路の途中で細い道路に入り、別ルートから戻る。
達也さんの所属している族は地元で長く続いているやつだ。
総長だかヘッドだか呼び方は分からないけど、族の上の人たちは達也さんよりも年上。
そんな簡単に抜けられるわけがない。
そんなことを考えていると、自動販売機が置いてある砂利の広場でバイクは止まった。