ぼくらのストロベリーフィールズ
あれ? いない。
A組の扉の先に見えたのは、いつもと変わらない風景だった。
初登校だし職員室にでも行っているのかな?
そう思いながら引き返そうとした時――
「あ、また来てるしー。今日は何の用〜?」
「げっ」
再び、A組のあのチャラ男と出会ってしまった。最悪。
「そんな嫌そうな顔しないでよ。俺とも仲良くなろうよ〜」
逃げようとすると、いつぞや同じく腕をつかまれた。
「や、もう行くんで」
「そんな嫌がらないでよ〜。いいじゃん……」
彼はそう言いながら、ニヤニヤした顔を私に近づけて、
「どーせ尚紀ともヤってるんでしょ?」とこそっと囁く。
――こいつキモイ! 嫌だ!
「は、何言ってんの? てか離して!」
そう大声を出し、必死でその腕を振り払った瞬間。
突然、目の前で、風を切る音が鳴った。
反射的に私は目をつぶり、肩をすくめる。
「ぶほっ!」
聞こえたのは、チャラ男のらしき短いうめき声と、
机や椅子がけたたましくぶつかり合う音。
――え?
恐る恐る目を開けると、チャラ男の姿はなかった。
彼はA組内の机と椅子を巻き込みながら倒れていた。