ぼくらのストロベリーフィールズ
7-1
☆
「えへへへ、嬉しいな~~~」
初めての給料を手にして、帰り道で1人ニヤニヤしてしまう私。
一吾くんは「キモッ」とつぶやいた後、無言でスタスタと歩いている。
私のシフトは週3~4くらい。
残りの日は、一吾くんのものも合わせて家で洗濯をしたり、両方の家の掃除をしたりしている。
ちなみに一吾くんは引っ越しバイトも続けていて、時々尚紀くんと一緒に行っているらしい。
そりゃ、一吾くんに比べたら私の労働なんてかわいいもんか。
でも嬉しいもんは嬉しい~。
「えへへ~何に使おうかな~。さすがに洗濯機は買えないけどー、焼肉とかどう?」
「…………」
あれ、無視っすか?
「ねー聞いてるー?」
仕方がないので、小走りで一吾くんの前に向かう。
「……は? おれ?」
一吾くんは不意打ちだったのか、一瞬だけ目を見開いた。
「そーだよー。だってまずはお世話になってる人に恩返ししないと~。あと~お父さんにはネクタイでも買ってあげようかなー」
そう続けた私を一吾くんは不思議そうな目で見つめている。
「え、どしたの?」
「おれはいいよ。せっかく自分で稼いだお金じゃん」
「だめだめ! 一吾くんは何がいい? ハンバーグ? あ、肉以外? じゃあお寿司とか? 回るやつのちょっといいとこ……っ」
一吾くんは私の頭をぐしゃっと撫でて、再び歩き出した。
「だからいいって」
「でもー」
「じゃ、今度のカレーに国産牛でも入れといて」
触れられたことによるドキドキが全身に広がっていくと同時に、ちょっとがっかりしてしまった。
一吾くんとデートしたかったなぁ、なんて。