ぼくらのストロベリーフィールズ
「そっかー。じゃだいぶお金あまるし、お母さんにも何か送っておこうかな」
とぼとぼと、同じくらいの背丈の影と一緒に歩く。
「……お母さんと連絡とってるの?」
「うん。時々」
そう答えると、再び一吾くんは不思議そうな顔を私に向けた。
それからすぐ無表情に戻り正面を向いた。
母の浮気現場を一緒に見たんだから、一吾くんが驚くのも当然だ。
「ま、そりゃー浮気はアウトだよ?」
確かにお母さんがしたことは許せないけど。
でも……。
「でも……お父さんとお母さんの話どっちも聞いてたら、お母さんも1人の人間なのかなぁって」
「…………」
一吾くんは無言のまま。
2人分の足音がまわりの家やマンションにぶつかって戻ってくる。
なんだか妙な空気が漂ってしまったため、
「ねーもしかして、私大人になった?」と彼に詰め寄ってみた。
すると、
「……3万ちょっとで大人って」と鼻で笑われた。
「だって私中学までおこずかい月5000円だったんだよー? 大成長じゃーん」
一吾くんが笑ってくれると私も嬉しくなる。
ま、今のはバカにされた笑いですが。
「あ、世話になってんだったら、尚紀にも何かあげたら?」
「え……?」
「料理とか教えてもらったんでしょ?」
「う、うん……」
何となく、一吾くんの半歩後ろを私は歩いていた。