ぼくらのストロベリーフィールズ
☆
ナズちゃんの件があってから、教室にいる時間が苦痛になった。
「うちら今日駅前のカフェ行くんだけど~。あ、でものばらちゃんは今日バイトだよね~?」
サンドイッチを手にしたナズちゃんはいつもと変わらない口調。
暗に来るなと命令しているような彼女の言葉は、私を嫌な気分にさせた。
今日はバイト休みなのに……。
「しょーがないよ。のばらちゃん忙しいから」
「それよりあそこの新しいケーキ、マジ美味しそうだしー!」
そんな会話を耳にしながらクラスを見渡す。
私たちと同じようにグループで食べている人もいれば、机をくっつけているカップルや、学食から戻ってくる男女たちもいる。
もう梅雨に入ろうとしている時期。
クラスメイトはみんなグループを完成させたようで、ここから抜け出すと私は孤立する。
どうして中学時代と同じ状態になりかけているのだろう。
暗い気持ちのまま、ゴミ箱に向かおうと席を立つ。
その時だった。
「キャッ!」
何かが足にひっかかる。
驚く間もなく、私はどさりと机と机の間に倒れていた。
がやがやとクラスが騒がしくなり、たくさんの目線が私に向けられた。
シャツ越しに床にこすりつけた肘がじんじんと痛んだ。
「キャー、のばらちゃん大丈夫~?」
上からナズちゃんの心配そうな声が降ってきた。
足かけた本人のくせに……。
悔しくて、「うん、いきなりコケてごめんっ。ちょっとすりむいちゃったし保健室行ってくるね!」
と逆に笑顔を向けておいた。