ぼくらのストロベリーフィールズ
開けられている窓からの風が一吾くんの髪の毛を揺らした。
ズボンの後ろポケットに手を入れたままの彼は、その風の方向をちらっと見た。
「どうせ誰かにやられたんでしょ。教科書のことも」
視線を外したままの一吾くんはそうつぶやき、大きくあくびをした。
尚紀くん、ボロボロにされた教科書のこと一吾くんに伝えたんだ。
心のどこかでは、1人で抱えるのはキツいから、一吾くんが気づいてくれたら……と思っていた。
でも、そう思う弱い自分になりたくなかった。
「ごめん、まだほっといてほしい。自分で何とかしたいから」
「わかった。でもほっとけないときは乗り込むよ、いい?」
私がゆっくり頷くと同時に、とんと背中を保健室の方向へ押された。
一吾くんは何もなかったかのように廊下を戻っていく。
その後姿を見て私は胸の奥が熱くなった。
普通の『恋』とか『好き』じゃない。
自分の気持ちを違う言葉で形容していたはずなのに。
だめだよ、そんな優しくされたら本当に好きになっちゃうじゃん。
というより、たぶん、好きで好きでたまらない。
友達として、家族として、
そして、男の子として――。