ぼくらのストロベリーフィールズ


「疲れた。よく分かんないし」


「あ、そこうちのクラスでは詳しくやったよ。ちょっと待って」



カバンからノートを取り出し、一吾くんの横に向かう。


彼の手が止まっている問題と、自分のノートと見比べてみる。



えーと。xをこーやって、あーやって。



「は? どういうこと?」


「だから、xの二乗をここにこーやって」


「途中、もーちょっと詳しくやってよ」


「え!? 私もそこまでよく分かんな……」



私も数学は不得意のため、教えようとしたものの混乱してしまう。



肩がぶつかり、ちらっと一吾くんを見た。


いつの間にか距離をつめていたようで、目の前に彼の顔があった。



机にひじをついたままの一吾くんと視線が重なり、鼓動が高鳴った。



「…………」



どうしよう。近い……。



問題も分からないし、ドキドキして体も動かないし、一吾くんに見つめられているし。



「ご、ごめん。やっぱ私もわかんないかも」


「ぷっ、だめじゃん」



得意げに教えようとしたのに、急に恥ずかしくなってしまう。


でも、機嫌の悪そうな顔がふわりとやわらげられ、私は視線を外すことができなかった。



< 200 / 315 >

この作品をシェア

pagetop