ぼくらのストロベリーフィールズ
「疲れた。よく分かんないし」
「あ、そこうちのクラスでは詳しくやったよ。ちょっと待って」
カバンからノートを取り出し、一吾くんの横に向かう。
彼の手が止まっている問題と、自分のノートと見比べてみる。
えーと。xをこーやって、あーやって。
「は? どういうこと?」
「だから、xの二乗をここにこーやって」
「途中、もーちょっと詳しくやってよ」
「え!? 私もそこまでよく分かんな……」
私も数学は不得意のため、教えようとしたものの混乱してしまう。
肩がぶつかり、ちらっと一吾くんを見た。
いつの間にか距離をつめていたようで、目の前に彼の顔があった。
机にひじをついたままの一吾くんと視線が重なり、鼓動が高鳴った。
「…………」
どうしよう。近い……。
問題も分からないし、ドキドキして体も動かないし、一吾くんに見つめられているし。
「ご、ごめん。やっぱ私もわかんないかも」
「ぷっ、だめじゃん」
得意げに教えようとしたのに、急に恥ずかしくなってしまう。
でも、機嫌の悪そうな顔がふわりとやわらげられ、私は視線を外すことができなかった。