ぼくらのストロベリーフィールズ
7-2
☆
「実は~もともとウザいって思ってたんだよね~」
「わかるー。ナズちゃんの気持ち知ってて、ずっとバカにしてたんじゃない?」
「中学の時からすげー男好きでハブられてたらしいよー」
個室の扉越しに聞こえてきたのは、そんな会話。
ナズちゃんといつもの友達2人の声だ。
授業がもうすぐ始まるからか、このトイレに私たち以外の人はいない。
もともとウザかった、って……何それ。
放課後一緒に遊んだり、しゃべったりしている時にも、そう思われてたの?
個室から出ることができず、ぎゅっとスカートを握る。
しかも、
「前の合コンの時にこっそり男子たちの悪口言ってたよ。みんな高校デビューくさいって~」
というナズちゃんのわざとらしい声がした。
そのせいで、
「うっそー、まじ腹立つ! うちの彼氏のことディスってたってこと?」
「ありえない! 調子乗りすぎ。何様なんあいつ!?」
と友達2人の怒りに満ちた声が響いた。
違う、いや、違くない……。
確かに、あの男子たちを高校デビューくさいって言ったのは事実だ。
何であんなこと言っちゃったんだろう。
「……ひっ!?」
授業開始のチャイムが鳴ると同時に上から水が降ってきた。
それからボコン、と落ちてきたバケツが頭にぶつかった。
笑いをこらえたような声が遠ざかり、扉がバタンと閉まる音が聞こえた。
ずぶぬれになった髪の毛と制服を両手でしぼり、ぼけーっとトイレの天井を見上げる。
これじゃ授業出れないよ。どうしたらいいんだろう……。
とうとう嫌がらせが本格化してきた。
落書きされた教科書、隠されたジャージ、
だけど教室ではいつも通りの態度。
ナズちゃんグループはクラスで一番目立っている。
私のクラスでの居場所がどんどん失われていく。