ぼくらのストロベリーフィールズ
どたん、ばたん、と床を揺らす音が響く。
嫌な予感は本当だった。
蹴られた勢いで後ろのタンスに体を打ち付ける母。
その髪をつかみ華奢な体を引きずり回す彼氏。
そいつは笑っているときと同じ目の色をしていた。
『何してんだよ!』
僕はその彼氏の首根っこを引っ張り、母から無理やりはがした。
普段は綺麗にまとめているロングヘアはぼさぼさで。
痛さで体が動かないのか、うつろな目で母は僕を見た。
『どうしたの? 一吾くんも混ざる?』
彼は悪気もなくそう言って、気持ち悪い笑みを浮かべた。
『……クズ野郎』
ぶちりと何かが切れた僕は、そいつの胸倉をつかみ、壁に勢いよく押し付けた。
その彼氏は目の奥まで驚いた顔をして、僕を見た。
背は僕よりも高く体系もがっちりしているが、ケンカ慣れしている僕の方が有利らしい。
母を暴力でねじ伏せるようなクズなら、僕より弱いのは当然だと思った。
そのまま顔面に一発入れようとしたが。
『一吾! やめて!』
引いた右手の拳を両手で握られた。
振り返ると、泣きながら僕の腕にくらいつく母がいた。