ぼくらのストロベリーフィールズ
『何でだよ! どうせ前からやられてたんだろ!?』
『やめて! お願いだから!』
必死の形相で、僕を止めようとする母。
彼氏は苦しそうな表情をしながらも、愛おしそうな目で母を見ていた。
『は? こんなクズ死んだほうがまし……』
――パンッ!
いつぞやと同じく、母に思いっきり頬を殴られた。
僕は後ずさりしながら、握った胸倉を離すことしかできなかった。
ふぅ、と彼氏は安心したようなため息を吐いた。
『わけわかんねーよ……』
キレた反動からか、目の奥がつんと痛くなった。
軽くめまいがした。
――『お母さん!! お母さん!!』
あの頃の自分と、今の自分は違う。
今度こそ母を助けることができると思っていた。
でも、あの時も、今も、母はそんなことを求めていなかったのだ。
『早くあやまりなさいよ!』
そう凄んでくる母をなぜか彼氏がなだめていた。
――一吾、また2人で頑張っていこうね。
泣きながら幼い僕を抱きしめる母の姿を思い出す。
その思い出を壊すように、壁を一発殴ってから部屋を出た。
クソだ。全部、どうでもいい。