ぼくらのストロベリーフィールズ
☆
『あのね、ずっと相談しようと思ってたんだけど。私が持ってるマンションの部屋あるでしょ。あ、昔住んでたとこね。
実は、貸してた人が年末に出ていくことになって』
昨日は殴ってごめんね、と母は何度も僕に謝ってから話を始めた。
『一吾、早くここから出たがってたじゃない。学費は何とかするから、向こうで高校行ってみたら?』
彼氏はいつも通り会社に行ったらしい。
食卓には優しい口調の母と、ふてくされた僕の2人だけ。
『いつもあんなことされてんの?』
と視線をそらしたまま聞くと、
『ううん、本当に時々だけ。……昨日、一吾が助けようとしてくれたのは嬉しかった。でも私にはあの人が必要なの。愛してるの』
と真剣な表情で返されてしまった。
この家と店は彼氏の資金援助があって成り立っているのだという。
そして、いつか結婚したいと思っている、と言われた。
『バカバカしー』
『とうとう一吾も高校生になるんだねー。もう大人じゃん。
やっとお母さんも幸せを手に入れられそうなの。分かってくれる?』
すっかり気持ちが萎えた僕は、母の提案を受け入れることにした。