ぼくらのストロベリーフィールズ







『あのね、ずっと相談しようと思ってたんだけど。私が持ってるマンションの部屋あるでしょ。あ、昔住んでたとこね。

実は、貸してた人が年末に出ていくことになって』



昨日は殴ってごめんね、と母は何度も僕に謝ってから話を始めた。



『一吾、早くここから出たがってたじゃない。学費は何とかするから、向こうで高校行ってみたら?』



彼氏はいつも通り会社に行ったらしい。


食卓には優しい口調の母と、ふてくされた僕の2人だけ。



『いつもあんなことされてんの?』


と視線をそらしたまま聞くと、


『ううん、本当に時々だけ。……昨日、一吾が助けようとしてくれたのは嬉しかった。でも私にはあの人が必要なの。愛してるの』


と真剣な表情で返されてしまった。



この家と店は彼氏の資金援助があって成り立っているのだという。



そして、いつか結婚したいと思っている、と言われた。



『バカバカしー』



『とうとう一吾も高校生になるんだねー。もう大人じゃん。

やっとお母さんも幸せを手に入れられそうなの。分かってくれる?』



すっかり気持ちが萎えた僕は、母の提案を受け入れることにした。




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