ぼくらのストロベリーフィールズ

8-1








季節外れだけど、人数が多いため今日は鍋にしてみた。


ぐつぐつと白菜やしらたき、しめじが上下に揺れている。



あとはお肉を入れて、締めはうどんでいいかな。



「わー、美味しそうじゃん」


「いやいや、切って鍋に入れただけだし」



私のすぐ横から尚紀くんは鍋をのぞき込んだ。


今日の尚紀くん家はお母さんが家事をする日らしく、バイト後に遊びに来てくれた。



奥では、一吾くんと准くんという人はじめ、ヒュウガくんなど彼の友達がぎゃーぎゃー騒いでいる。



准くんは初対面の人とも仲良くできるタイプっぽい。



プシュ、と缶が開けられる音が鳴る。


まだご飯できてないんですけど!




「肉はしらたきと離れたところに入れた方がいいよ。固くなっちゃうから」


「へー知らなかった! ありがとうー」



すでにどんちゃん騒ぎをしている男子たちとは違い、手伝ってくれる尚紀くんはやっぱりいい人だ。



買ってきた割りばしと紙のうつわを袋から出す。


その間に鍋がしゅーっと噴き出したため、私は慌ててコンロに手を伸ばした。



「あ、火傷しちゃうよ」



尚紀くんは私の手を握って制した後、慣れた様子でコンロを弱火にした。



「う、うん……」



手は繋がれたまま。


近い距離で視線が重なり、私は目をそらす。



尚紀くんは「鍋は俺持ってくから皿とはしお願い」と軽く微笑み、私の手を離した。


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