ぼくらのストロベリーフィールズ
8-1
☆
季節外れだけど、人数が多いため今日は鍋にしてみた。
ぐつぐつと白菜やしらたき、しめじが上下に揺れている。
あとはお肉を入れて、締めはうどんでいいかな。
「わー、美味しそうじゃん」
「いやいや、切って鍋に入れただけだし」
私のすぐ横から尚紀くんは鍋をのぞき込んだ。
今日の尚紀くん家はお母さんが家事をする日らしく、バイト後に遊びに来てくれた。
奥では、一吾くんと准くんという人はじめ、ヒュウガくんなど彼の友達がぎゃーぎゃー騒いでいる。
准くんは初対面の人とも仲良くできるタイプっぽい。
プシュ、と缶が開けられる音が鳴る。
まだご飯できてないんですけど!
「肉はしらたきと離れたところに入れた方がいいよ。固くなっちゃうから」
「へー知らなかった! ありがとうー」
すでにどんちゃん騒ぎをしている男子たちとは違い、手伝ってくれる尚紀くんはやっぱりいい人だ。
買ってきた割りばしと紙のうつわを袋から出す。
その間に鍋がしゅーっと噴き出したため、私は慌ててコンロに手を伸ばした。
「あ、火傷しちゃうよ」
尚紀くんは私の手を握って制した後、慣れた様子でコンロを弱火にした。
「う、うん……」
手は繋がれたまま。
近い距離で視線が重なり、私は目をそらす。
尚紀くんは「鍋は俺持ってくから皿とはしお願い」と軽く微笑み、私の手を離した。