ぼくらのストロベリーフィールズ
「いやいや、大した傷じゃなかったし! そう思ってくれるだけで十分……ふがっ」
私が慌てて顔を上げると、後頭部に手が置かれ更に深く抱きしめられた。
「あと、だめだよこういうことしたら……。あきらめられなくなるじゃん」
顔が彼の胸に押し込められているせいか、こもった言葉は聞き取れなかった。
声の振動が体を伝って私の心臓を揺さぶった。
「え……?」
聞き返すと、両手で肩を押され解放された。
尚紀くんはいつもの優しい笑みを私に向けていた。
「なーんて。急にごめんね。今、俺酔っ払いだから」
「ちょ、ちょっと! 普通にびっくりするから!」
「あはは! のばらちゃんシラフなのに顔赤いしー。ありがとね。じゃあねー」
テンパる私に対して、彼は爽やかにマンションを出て行った。
ちょ、何だったの!?
酔った勢いとはいえ、心臓に悪すぎるんですけど!
火照った顔を両手で挟み込み、揺さぶりながら部屋に戻った。