ぼくらのストロベリーフィールズ
部屋に戻ると、一吾くんは准くんに勉強を見てもらっていた。
「だからーここは公式を使ってー」
「あー全然頭に入んない」
お酒が入っているからか、いつもにも増してダルそうだ。
准くんは今日ここに泊まることになった。
寝る前に私は准くんといろいろ話してみたいと思った。
彼はここに戻って来る前の一吾くんを知っているから。
一吾くんがベランダで一服している間に、准くんに麦茶を入れて、私もテーブルをはさんで座った。
先に口を開いたのは准くんだった。
准くんは、鍋ごちそうさま、と言ってから、
「みんながいた時はあまり触れなかったけど、いじめの原因って心当たりあるの?」と聞いてきた。
「うん。まあ」
「一吾じゃないの? あいつ昔っからモテるし。めんどくさい女子に嫉妬されてるとか?」
准くんはほわーんとしているイメージなのに、やっぱり鋭いなぁ。
私は静かに頷いてから、
「でも、それは単なるきっかけで。本当は全然関係ないみたい」と続けた。
確かにナズちゃんは一吾くん狙いだった。
でも、もともとウザかったって言っていたし、私を排除できるきっかけを探っていたのかもしれない。
「記録つけときなよ。やられたこと全部。こっそりスマホで動画とかとってもいいと思うし」
「え、どういうこと?」
「いじめ側の女子を追いつめる材料集めなきゃ。みんなも協力してくれるみたいだし」
「うん? やってみるよー!」
いじめの証拠をとれってことかな。
みんなも協力、ってどういうことだろうと思いつつ同意しておいた。