ぼくらのストロベリーフィールズ
一吾くんはベランダからまだ戻ってこない。
よし、今のうちに。
「あのさ……一吾くんってここ来る前、どんな感じだったの?」
私が質問すると、すぐに准くんはこう言い切った。
「根はずっと変わんないよ。優しくていいやつ」
「そうなんだ……」
確かに一吾くんは優しいと思う。
何考えているか分かんない時も多いけど。
「あ、でもケンカとかよくしてたんでしょ?」
「まーねー。あいつ超強いからねー。でも先輩に恵まれてたしそんなヤバいことはしてないよ」
准くんの言う、ヤバいのレベルの基準は分からない。
でも、ケンカだけじゃなくて、きっと、誰かを守る時にも暴れていたのかな。
空き巣から私を助けてくれたように。
麦茶を口にしてから、私はもう1つ聞いてみた。
「あと……付き合ってる人とかいた?」
自分で聞いておきながら、知らない方がいいかもと軽く後悔する。
いやいや、でも気になる!
一吾くんまだ戻ってくるなよー。
何かに気づいたらしい准くんはニヤリと笑い、「一吾のこと好きなの?」と逆に聞いてきた。
「え、や、その、ね! ちょ、察してよー!」
恥ずかしくて麦茶を吹き出しそうになってしまう。
「あはは! たぶん彼女はいなかったよ。まあ……あいつ、やっかいな事情あるし、頑張ってってしか言えないけど」
「へ? やっかいな事情って……?」
「うん。ま、それは一吾に直接聞いてみなよ」
何だろう? と考えていると、
ガラリと窓が開き一吾くんが戻ってきてしまった。