ぼくらのストロベリーフィールズ
「うっさい。だまれ。……それ誰に言われたの?」
ナズちゃんの声が次第に低くなってきた。
「他クラスの男子。名前は言えないけど……」
「は? あんたらもナズに隠し事すんの?」
「だって言う必要ないじゃん! うちだって彼氏と別れたくないし!」
合コンでできた彼氏を持つ友達が、ナズちゃんに必死でくらいついている。
しかし、そんなのを気にも留めない様子でナズちゃんは笑い出した。
「あはははっ。そんなのナズがあんたの彼氏にチクったら一緒じゃーん」
「……っ」
その友達は言葉に詰まったようだ。
トイレ内に沈黙が走った、が。
「そしたらあたしが先生にチクるよ! ナズちゃんがいじめやってること!」
もう1人の友達が必死な声をあげた。
そして――
「もう嫌だよぉ~。もちろんナズちゃんには男紹介してもらって感謝してるよ?
でもいじめやってるの他の人にバレちゃったじゃん。先生にチクられたら終わりじゃん。もう学校行くの嫌だ~ううっ」
彼女は、もう嫌だ~あんなことしなきゃよかった~、と泣きながら叫んでいた。
私は静かにその場から離れ、教室に戻った。
ナズちゃんはもちろん、友達2人も、私への嫌がらせを反省することはない。
みんながみんな、自分の立場を守ろうとしているだけ。
友達2人とナズちゃんは一切かかわらなくなった。
同時に、私への嫌がらせもなくなった。
いじめは終わったっぽいけど、私の胸の中はもやもやしていた。
どうして女子との友情は、男が絡むと簡単に壊れてしまうのだろう。
それとも。
もともと友情なんて成立していなかったのだろうか。