ぼくらのストロベリーフィールズ
「うざい。さっさと消えて!」
ナズちゃんはひっきりなしに手を上げてきた。
スカートがめくれようと、髪の毛が乱れようと。
うわ~やっぱ女子のケンカとか見たくねぇー、とヒュウガくんが情けない声をあげている。
時々蹴りをくらいながら、両腕で攻撃を防ぐことしかできなかったけど。
次第に、ナズちゃんの息が上がっていくのが分かった。
今がチャンスかもしれない。
「何で? 私は……みんなと仲良くしたかっただけなのに!」
ガードしていた腕をおもいっきり伸ばし、彼女の攻撃を払ってから。
私はナズちゃんを思いっきり突き飛ばした。
「うざいならもうかかわらないで!」
言葉では怒りをぶつけることができた。
だけど――
「……っ!!」
どうしても右手を振り下ろすことができなかった。
暴力はよくないという思いがある。
今まで素手で人を殴った経験もない。
きっと、その隙を狙われたのだろう。
「ひっ!」
パシーン、と彼女からの強い平手をくらってしまった。
表面の痛みとともに脳も軽くゆれたようで、視界がぐわんと回る。
意識がふっと切れそうになった。
やばい、倒れちゃうかも……。
「のばら!」
あれ? 一吾くんが珍しく声をあらげている。
「顔殴る勇気ないならボディーやれ」
――は!?
顔じゃなくてボディーって……。
いつぞやの熱血教師ものじゃないんだから。