ぼくらのストロベリーフィールズ
ごそごそと、隣の布団に向けて動き出した時。
やっと閉ざしていた固すぎる扉を彼は開けてくれた。
「おれ……自分とやった女を好きになる自信ない」
「え?」
普通、好きだからするものじゃない? と言いかけたけど。
震えた声で一吾くんは続けた。
「のばらのこと嫌いになりたくない。汚したくない。でもすげー抱きたくなる時があって、苦しい」
「…………」
「だから、おれにならいいよとか言わないで」
「……っ」
私は手の甲を自分の頬に当て、流れる涙をこすり取った。
鼻水をすすり、一吾くんの逆側に寝返りを打つ。
一吾くんは、もちろん父との約束を守るだろう。
私を嫌いになりたくない、という彼の気持ちも嬉しかった。
少しずつ私の中で生じていたその思いが、確信に変わっていく。
その考えを認めたくなくて。
でも、いつかはそうしなきゃいけないことも分かっていて。
私はぎゅっとシーツを握りしめることしかできなかった。
この部屋にいることで、苦しんでいるのはお互い様だった。
本気で一吾くんと結ばれたいと願うなら、
私は、この部屋を出ていく覚悟を決めなきゃならないんだ。