ぼくらのストロベリーフィールズ







「のばらちゃん、生3、ハイボール2、座敷奥で!」


「了解ですっ!」



予定を変更して早めに帰り、次の日の夕方からバイトに入った。


ドリンク割引フェアのため、店内は常に満席だった。



こりゃ、確かに店長噴火しそうだな……。



一吾くんは大根をおろしながら、


「帰ってきて大丈夫だったの?」と横目で私に話しかけた。



「うん。だいたい用事は済んだし」



ドリンクを作って運んで、注文をもらって再び運んでを繰り返す。


あっという間に上がりの時間になっていた。



「のばらちゃんありがとね! 今日入ってくれて!」


「いえいえ! 店長こそお疲れ様です! お先失礼します!」



高校生の私と一吾くんは同じ時間に勤務終了となる。



私たちの家に向かう道を一緒に歩いた。



「あー疲れた」



ため息とともに言葉を吐き出す一吾くん。


今日は引っ越しバイトの後で、居酒屋に入ったらしい。



「大変だったねー。今日は早めに寝なよ」



そう伝えると、一吾くんはちらっと私を見た。



「……来ないの?」


「今日お父さん、帰ってきてるから」


「そっか」


「お母さんも」


「…………」



歩くごとにまわりの明かりが少なくなっていく。


新しい住宅やアパートが並ぶ、いつもの住宅街に戻ってきた。


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