ぼくらのストロベリーフィールズ
☆
「のばらちゃん、生3、ハイボール2、座敷奥で!」
「了解ですっ!」
予定を変更して早めに帰り、次の日の夕方からバイトに入った。
ドリンク割引フェアのため、店内は常に満席だった。
こりゃ、確かに店長噴火しそうだな……。
一吾くんは大根をおろしながら、
「帰ってきて大丈夫だったの?」と横目で私に話しかけた。
「うん。だいたい用事は済んだし」
ドリンクを作って運んで、注文をもらって再び運んでを繰り返す。
あっという間に上がりの時間になっていた。
「のばらちゃんありがとね! 今日入ってくれて!」
「いえいえ! 店長こそお疲れ様です! お先失礼します!」
高校生の私と一吾くんは同じ時間に勤務終了となる。
私たちの家に向かう道を一緒に歩いた。
「あー疲れた」
ため息とともに言葉を吐き出す一吾くん。
今日は引っ越しバイトの後で、居酒屋に入ったらしい。
「大変だったねー。今日は早めに寝なよ」
そう伝えると、一吾くんはちらっと私を見た。
「……来ないの?」
「今日お父さん、帰ってきてるから」
「そっか」
「お母さんも」
「…………」
歩くごとにまわりの明かりが少なくなっていく。
新しい住宅やアパートが並ぶ、いつもの住宅街に戻ってきた。