ぼくらのストロベリーフィールズ
「え? 一番、最初!? ……えーと」
思い出そうと、私は目を閉じた。
すると、まぶたの奥にある映像が描き出された。
「あ……たぶん、2歳とか3歳くらい?
お父さんとお母さんに誕生日を祝ってもらって、テーブルに大きなイチゴのケーキがあって嬉しかった記憶、かなぁ」
「ふーん」
一吾くんは? と聞こうとしたけど、
珍しく彼は自分から口を開いた。
「おれは……母さんに抱きしめられて、ずっと一緒に生きていこうねって泣きながら言われてるとこ」
「……え」
「今思うと、どうせ男に逃げられた時だったんだろうけど」
「…………」
何で、それを分かっていて、行かなければならないのだろうか。
「母さんを助けられるのは、おれだけだから」
違う。何かが、違う気がする。
その違和感の正体が分からなくて、
私を振り払って走り出した彼の後姿を見届けることしかできなかった。
1人取り残されて、ようやく気がついた。
本当に危険だったら警察に電話すればいいのだ。
私が遭遇した空き巣事件とは違って、一吾くんに電話できるなら声を出せる状況のはず。
だけど、家族の中でしか分からないことだってある。
他人である私が関わってはいけない問題もあるだろう。
そこに踏み込めなかったことを後悔した。