ぼくらのストロベリーフィールズ
『のばらちゃん、いじめられてるっぽいんだよねー』
引っ越しバイトの休憩中、尚紀がそうつぶやいた。
聞くと、ボロボロの教科書が捨てられていた、とのこと。
『そんなん犯人見つけてシメちゃえばいいじゃん』
『いやいや、女子のいじめって怖いらしいから。下手したらもっとヤバいことされるかも』
僕も尚紀も、女子と遊ぶことはあっても仲間としてつるんだことはなく、イメージがよくつかめなかった。
しかし、居酒屋でのバイト中、彼女の肩にあざを見つけた。
Tシャツの袖から少しはみ出ていただけだったけど、すぐに気がついた。
僕は、母の肩にあった赤紫色のあざを思い出した。
のばらも同じような目にあっているかと想像すると、犯人を捜して半殺しにしてやろうと思ったけど。
もう1つよみがえったのは、
あのクズ男を殴ろうとした時、僕の右手に食らいついてきた母の感触だった。
肘や膝にも傷を見つけ、僕は彼女を問い詰めたが、
『ごめん、まだほっといてほしい。自分で何とかしたいから』
と言われてしまった。
どうしたらいいか分からないままに、彼女は学校を休んだ。
僕は勉強を教えてもらう名目で、准クンに遊びに来てもらうことにした。
彼は男女どちらとも上手く関係を築けるタイプだ。
連絡するとすぐ僕の家に来てくれて、予想通りのばらともすぐ打ち解けていた。