ぼくらのストロベリーフィールズ
家に帰ると、のばらが笑顔で迎えてくれた。
『お疲れさま』と頭を撫でると、彼女は大きな目を潤ませ僕を見た。
あのショボい男子に襲われかけたらしい彼女を安心させたかった。
しかし、頬を赤く染めた彼女が可愛らしくて、逆に襲いたくなるほど胸が切なくなった。
流れのままに僕は母の話をしていた。
のばらに話すのは、たぶん初めてだった。
眠れなくなったらしい彼女は、僕になら襲われてもいいと言った。
頭が、心が、胸が、痛かった。
のばらに苦しい思いをさせたくないのに。
僕は彼女に冷たい言葉を吐くことしかできなかった。
一緒にいるとのばらを泣かせてばかりだ。
それからは平和な日々を過ごしたが、
ある日、しばらく出かけてくると言って彼女はどこかへ行ってしまった。
彼女は家族の関係修復に向けて、頑張っているようだった。
このまま彼女には自分の家に戻ってもらった方がいい。
僕ではなく尚紀みたいないいヤツと結ばれた方がいい。
でも、本当は触れたくて仕方がなくて。
久々に彼女と手をつないだ時、たまらなく幸せな気持ちになった。
自分の中に漂い続けている嫌悪感が憎くて仕方がなかった。
そんな時だった。
『一吾! 助けて!』
僕を求める叫び声がスマホ越しに聞こえたのは。
止める彼女を振り切った僕は、大通りまで走りタクシーを拾った。