ぼくらのストロベリーフィールズ
「いらっしゃいませー! 3名様ですか? あ、すみません! すぐ行きますねー」
一吾くんがいないバイト先は、忙しくててんてこまいだった。
前に実家に帰った時とは違い、一吾くんからは何の連絡もないらしい。
店長もバイトくんも無断欠勤中の彼を心配していた。
尚紀くんやヒュウガくんがラインをしても、何の反応もなかった。
「あ!」
バイトが終わりスマホを見ると、ある人からの着歴があった。
私は手を震わせながら、急いで折り返した。
呼び出し音が鳴ってすぐに、電話に出たのは――
『のばらちゃん? 准だけど。突然ごめん』
「ううん。こっちこそごめん、出れなくて」
『……今、大丈夫?』
「うん。もしかして……」
心臓の音が激しくなり、じわりと目に涙がたまっていく。
一歩、一歩、進むごとに。
そして、准くんの話を理解するごとに。
今日から父は出張で、母もいったん荷物を取りに実家に帰っている。
一吾くんの家に行くのは、これが最後になるかもしれない。
私は閉店前のスーパーで食材を買って、いつものマンションへと走った。