ぼくらのストロベリーフィールズ
「えー。一吾くんが食べてよー。せっかく買ってきたんだから」
「いいよ」
「何で? 本当はイチゴ好きなんでしょ?」
「別に。甘いの苦手だし」
「うそだー。前に私がこれ食べちゃった時、機嫌悪そうにしてたじゃん」
そう伝えると、彼はばつが悪そうな顔をしてから、
ふっと優しい笑みをこぼしてくれた。
どくん、と胸が高鳴る。
一吾くんが、好きだ。大好きだ。
「じゃ、一緒に食べよ」
「うん!」
私は一吾くんの隣に座って、肩をくっつけた。
顔をほころばせたまま、上目で彼を見つめる。
一吾くんはそんな私を一瞬だけ見た後、逆側に視線をそらした。
私は彼のTシャツをつんと引っ張った。
「なに?」
「ううん」
一吾くんは、顔をそむけたまま。
どうして私を見てくれないの?
胸のもやもやが熱を帯びていき、私は彼の腕に抱きついた。
細いのに筋肉がしっかりついているその腕から男の子らしさを感じ、胸のドキドキが高まった。
「だから、なに」
「なんでもないよ」
「ぷっ、なんでもなくないじゃん」
やっとまた笑ってくれた。
それだけで嬉しかったけど、でも、足りなかった。