ぼくらのストロベリーフィールズ


「スプーンあったよ」



一吾くんは手元で銀色を光らせながら戻ってきた。



しかし、


「あ……」


と、驚きと落胆が混ざった声を発していた。



その視線はムースに向けられている。


だって、あるはずのイチゴが無く、ピンク色に小さなくぼみがあるだけだから。



ほーら、やっぱりイチゴ食べたかったんじゃん?



ぎろりと鋭い彼の視線が、私に注がれた。



その瞬間、私は言葉をぶつけてやった。



「ひひっへんひゃへーほ。ほのははほんはほー!」



「…………は?」



一吾くんは怪訝そうな顔になり、


真っ赤なイチゴを口にくわえたままの私を見つめた。


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