ぼくらのストロベリーフィールズ
きっと何て言ったのかは、バレないだろう。
私はそうタカをくくっていたが。
「…………ちっ」
舌打ちとともに、一吾くんは私の正面にどかっと座った。
やば、聞こえちゃった?
冷や汗をかきそうになるくらいビビってしまう私。
そんな私にお構いなしで、一吾くんは無言のまま手を伸ばした。
「……ふぁ!」
後頭部がつかまれ、急に引き寄せられる。
そのまま彼は私がくわえたイチゴに噛みついてきた。
「……っ!」
半分になったイチゴが、彼の舌とともに口の中へ押し込まれる。
押しつけられた唇と絡まる舌によって、
甘さが口の中に広がり、頬だけじゃなくて全身がとろけそうになった。
一吾くんのTシャツの肩の部分をぎゅっと握る。
しかし、その手はすぐに彼の冷たい手によってはがされ、指がからめられた。
唇が離れた時、私は軽く息切れを起こしていた。
口内に残った甘みをごくりと飲み込んだ、その時。
急に耳元でささやかれた。
「聞こえてんだよ。ばーか」
強引に抱きしめられた後は、私は彼に自分の全てをゆだねた。
指先は冷たかったけど、その体は私と同じくらいに熱くて、嬉しくて。
とぎれとぎれの思考の中、この時間が永遠に続けばいいのにと思った。
彼の現実を全部壊してあげたくて仕方がなかった。