ぼくらのストロベリーフィールズ
「だからって。一吾を『内縁の父に暴力をふるった少年』にするなんて。ひどすぎるよ」
「うん……」
とぼとぼと2人でカフェに入り、コーヒーを飲んだ。
私は准くんから聞いた内容を尚紀くんだけには話しておいた。
お母さんの彼氏を殴って全治数か月のケガを負わせたこと。
その彼氏がお母さんと相談のうえで被害届を警察に出したこと。
准くんが一吾くんを見つけて家にかくまったけど、
目を離した隙に『サツ行く前に部屋片付けてくる』というメモを残していなくなってしまったこと。
カフェ内はがやがやと騒がしくて、私たちが日常に戻ってきたことを実感させた。
「突然だけど、のばらちゃんは好きだったの? 一吾のこと」
「え? 何。突然!」
「ほら、もし好きだったら、一吾は初恋実らせたってことになるじゃん」
「ん~~~~」
そういえば。一吾くん、私のこと初恋の人って言ってたな。
彼の温もりを思い出して、私は顔がかーっと熱くなってしまった。
「だよね? あーあ。そうだよねー?」
ため息をつきながら、尚紀くんは伸びをして椅子にもたれた。
「えーーと。まあ。そうかもしれないです」
「あはは。やっぱり」
「え!? バレてた?」
「分かるよ。だって俺、のばらちゃんのこと好きだったから」
「はいーーー!?」
私は慌ててコーヒーを吹き出しそうになる。
尚紀くんも驚いた顔になり、気づいてなかったの? と口にした。
「だって。尚紀くん言ってたじゃん。危険とか遊びが好きだって」
「ふーん?」
「だから……私のことからかって遊んでただけかと……」
そう続けると、尚紀くんは背もたれから離れ、前かがみになり腕で口元を隠した。
くくくと笑い声がそこから漏れていた。